沖縄を求めて沖縄を生きる 大城立裕追悼論集

又吉栄喜 山里勝己 大城貞俊 崎浜 慎 編

2,500円 +税

ISBN: 978-4-7554-0316-3        2022年5月10日発行

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沖縄初の芥川賞作家で長年、沖縄文学をけん引し、沖縄とは何かを問い続け戦後史を体現した大城立裕。小説、戯曲、評論、組踊、琉歌、エッセーまでさまざまな分野で琉球・沖縄の通史を独自の歴史観で書き続けてきました。日本復帰前の1967年には、米兵による暴行事件を通して、米琉親善の欺瞞を暴いた「カクテル・パーティー」で芥川賞を受賞しました。68年には沖縄問題の根源に迫った「小説 琉球処分」を出版しました。組踊集には『真北風が吹けば―琉球組踊続十番などの作品集があります。
大城立裕の文学世界は、沖縄の屈曲した歴史を非常に鮮明に再現してきたともいえます。帝国の一員であると同時に、帝国の抑圧と差別の当事者でもあるということ、第二次世界大戦後、アメリカという新しい帝国秩序が、具体的かつ現実的な抑圧と差別をもって作用した地域であるということ、植民地主義の断絶と連続、同化と異化という自己分裂の中に位置していることなどを、非常に繊細かつ省察的な筆致で描いてきたとかんがえています。大城立裕は「沖縄人とは誰なのか」、そして「日本人とは誰なのか」という根元的な問いを投げかけ、その答えを見つけ出すべく常に努力し、戦後沖縄文学の第一線に立たれてきました。
大城立裕の訃報は2021年10月27日、多くの人々へ衝撃を与えました。大城立裕が残したもの、愛したものがなんであったのか。この遺産を検証し共有することが大城立裕の足跡や提示した課題に答えるためにも、「大城立裕追悼論集」の発行をいたしました。

目 次
発刊にあたって
第Ⅰ部 「大城立裕追悼記念シンポジウム」から
 大城立裕の文学と遺産  総合司会 美里博子
 第1章 基調報告
  「辺野古遠望」と「銀のオートバイ」……又吉栄喜
  英米文学研究者の視点から ―大城文学に関する二つのコメント……山里勝己
  「カクテル・パーティー」との出会い……村上陽子 
 第2章 パネルディスカッション  
  コーディネーター……大城貞俊
  パネリスト……小嶋洋輔 呉屋美奈子 崎浜慎 知念ウシ
第Ⅱ部 エッセイ― 沖縄を求めて
 上海で得た問いから……大城貞俊
 歴史家、大城立裕……高良倉吉
 「世紀替わり」の頃の大城立裕……本浜秀彦
 大野隆之先生のこと、中野坂上の「カクテル・パーティー」のこと……伊野波優美
 モノレールで対話……西岡敏
 「実験方言」の銀河系……松下優一
 譲らない最後の一割……嘉数道彦
 沖縄芝居実験劇場の挑戦―『嵐花―朝薫と朝敏―』をめぐって……田場裕規
 大城立裕の翻訳された作品……スティーブ・ラブソン
 「沖縄」という窓越しに東アジア人に語りかけてきた大城立裕先生を偲んで……孫知延
 大城立裕先生のことなど……波照間永吉
 大城立裕さんと「県外移設」論……知念ウシ
 演劇集団「創造」の良い友、大城立裕という先輩……金誾愛(キム・ウネ)
第Ⅲ部 作家論・作品論 ― 沖縄を生きる
 幻のインタビュー―大城立裕先生の自恃と作家魂の軌跡……玉木一兵
 錯綜に対峙する文学―『神島』の再読に向けて……鈴木智之
 鎮まらない焔―大城立裕の私小説と「普天間よ」「辺野古遠望」……武山梅乗
 〈民族〉への思考―大城立裕の戦時体験と『朝、上海に立ちつくす』をめぐって……柳井貴士
 「普天間よ」私感……仲程昌徳
 琉球処分をめぐる沖縄青年群像―大城立裕『小説 琉球処分』『恩讐の日本』を中心に……関立丹
 選考委員としての大城立裕―大城立裕は「文学」に何を求めたか……小嶋洋輔
 私たちは何から解放されたのか……崎浜慎
 文学表現をめぐって・大城立裕の挑戦……呉屋美奈子
 「カクテル・パーティー」の上演はなぜ必要であったか……フランク・スチュワート
 「カクテル・パーティー」を超えて……趙正民
 短歌への宿題……屋良健一郎

付 録 
 1 大城立裕年譜
 2 執筆者プロフィール
 3 刊行・編集委員