蛍の川

大城貞俊

2,000円 +税

ISBN: 978-4-7554-0317-0        2022年03月30日発行

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四六判上製 200ページ

「椎の川」の続編。
ハンセン病と戦争の痛みを抱えた花雲ヌ物語
私はお母に似ていると思った。目の大きさ、あごの輪郭、耳の形、何もかも似ていて欲しかった。曲がった指も似ていていい……。(本文より)
静江が隠れ住む離れ屋の方角に蛍が飛び交っていた。静江の死を暗示し戦争に征った源太の死を暗示する絶望の光だった。しかし、今は違う。希望を示す蛍の群れだ。源太や静江、源助やタエ、死んだ人たちのマブイ(魂)の静かな瞬(またた)きだ。水路を流れる水の音も聞こえる。太一には蛍の群れが、さらさら、さらさらと重なった骨の音のように、小さく音立てているようにも思われた。(本文より)