国家に捏造される沖縄戦体験 ―準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀―

石原昌家(沖縄国際大学名誉教授)

2,800円 +税

ISBN: 978-4-7554-3009-1        2022年02月25日発行

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1970年から沖縄戦の凄惨な戦場体験を聞きとりしてきた著者が、若い世代に伝えたい!戦争国家が現実化する時代に抗う論理を。

今、奄美を含む南西諸島の自衛隊による軍事化が土石流の勢いで強行され、沖縄戦前夜の様相を呈しています。沖縄住民に適用した援護法の真の狙いは、国家の戦争責任を免責にして、日本軍の犯罪を免罪にすることにあります。援護法と靖国神社合祀のからくりは、沖縄戦認識の再定義となり、戦争ができる国へ姿を変えています。この時代に抗う論理を本書が示しています。

(著者まえがきより)
沖縄戦体験を日本政府がからめ取っている援護法と靖国神社合祀の仕組みが根底から分かったところで、いま、沖縄を取り巻く軍事状況をみわたすと、自民党政権が「戦争ができる国」へと強行採決して法整備し、日本の国の姿を変えていることに慄然とする。本書では、日本政府が沖縄戦体験を捏造する真の目的は、ふたたび、戦前同様な「軍事国家日本の再形成」への道を切り開いていくことにあった、ということが史資料を裏付けに用いながら、解明できた。

目次●国家に捏造される沖縄戦体験―準軍属にされた0歳児・靖国神社合祀

新装改訂版のまえがき 3
[凡例] 19
本書を読むにあたって、沖縄住民に適用した援護法の基礎となる知識 21
 1 援護法の問題点
 2 援護法で支給される援護年金の名称と金額
 3 援護法と靖国神社合祀
 4 強制集団死が「集団自決」として靖国神社合祀へ


Ⅰ 錯綜する沖縄戦認識  25

[序章]沖縄戦認識の変遷と問題のありか
一、第三次家永教科書検定訴訟―「沖縄戦に関する部分」問題  26
1 信じ込まされていた沖縄戦認識  2 原告側の証人を引き受けて深めた理解

二、教科書検定意見撤回を求める9・29県民大会  35
1 「集団自決」の記述から「軍関与」削除
2 県民大会実行委員会の構成団体と援護法  
3 靖国神社・厚労省と県民大会
4 矛盾にみえる政府答弁

[第一章]捉えなおす沖縄戦認識―改正軍機保護法と沖縄戦
一、平和祈念資料館設立理念の修正と史資料の展示  49
二、改正軍機保護法で知る住民被害の根源  57

[第二章]迫りくる沖縄戦認識の再定義―連動する日米ガイドラインと有事法制
一、日米ガイドラインのあらましと有事法制との関連性  69
二、教科書検定問題の背景にあるもの  72
1 有事法制制定の地ならし―ソ連脅威論
2 ソ連脅威論と沖縄戦体験
三、「日本軍の住民殺害」削除と住民の「集団自決」加筆命令―一九八〇年代の教科書検定  77
1 一九八二年第一次教科書検定事件  
2 一九八三年第二次教科書検定事件―住民の「集団自決」加筆命令
四、本格化しはじめた右傾化・軍事化  87
1 駐留軍用地特別措置法の再改定
2 「軍隊は国民を守らない」のは当たり前
五、国防族・歴史修正主義者が捏造する「沖縄戦の真実」  92
1 連動する有事法制と沖縄戦認識の再定義
2 「軍事国家」構築に向けて賛美される軍民一体感


Ⅱ 援護法と靖国神社合祀  107

[第三章]国会報告で知る日本政府の沖縄戦認識―援護法制定前夜
一、戦後六年七か月目の沖縄戦実態調査  109
二、日本政府が把握した戦場の跡―沖縄遺骨収骨状況調査報告  114

[第四章]沖縄への援護法適用と拡大
一、援護法の沖縄適用と援護課の設置  141
1 沖縄班の新設
2 沖縄地元紙が伝える援護法への期待
二、「南連」と遺族会の事務所開設  156
三、住民への適用拡大へ向けて―遺族会の陳情活動  160
1 遺族会本来の沖縄戦認識
2 遺族会代表の国会発言

[第五章]戦闘参加者概況表で知る日本政府の沖縄戦捏造
一、戦闘参加者概況表とは  181
二、戦闘参加者概況表の「概況」と特徴  188
三、捏造が前提の戦闘参加者申立書の書式  194
1 「戦闘記録」の書き写しと「申立書」の代筆
2 捏造された記載要領と捏造の指導

[第六章]援護法と靖国神社合祀―報道と資料
一、沖縄の遺族会による靖国神社初参拝―一九五三年 ―米軍政下の靖国神社崇拝 227
二、沖縄地元紙にみる靖国神社参拝と合祀・その1―一九五七年前後 ―米軍への抵抗と靖国神社合祀を志向 231
三、沖縄地元紙にみる靖国神社参拝と合祀・その2―一九五八年 ―靖国神社合祀下の平和志向と皇国史観 242
四、琉球政府文書でみる援護法と靖国神社合祀  261
1 靖国神社と護国神社
2 遺族会の靖国参拝と政府の援助
3 「合祀に関する検討資料」で知る靖国神社合祀
4 国と琉球政府の靖国神社合祀への協力関係

[第七章]六歳未満児への適用と戦闘参加者に関する仕組み
一、沖縄戦被災者への被害補償を求めて―一九七〇年代の新たな展開 ―全国比較でみる沖縄戦被害 285

二、 六歳未満児への適用拡大を求めて ―遺族の補償要求が原点 291
三、 六歳未満児への適用開始―一九八一年  297
四、老幼婦女子が戦闘参加者扱いになる仕組み  30
1 援護法適用の現場
2 『援護法Q&A』と琉球政府文書が説く戦闘参加者の定義

[終章]沖縄靖国神社合祀取消裁判の意味するもの
一、共有されてこなかった沖縄戦認識  318
1 いま沖縄の議会で
2 沖縄戦認識の変遷
二、沖縄靖国神社合祀取消裁判とは  324
三、執筆をおえて去来する思い  329

注記  337
[付録]「戦傷病者戦没者遺族等援護法」関連年表 作成=安良城米子 補記・監修=石原昌家 
新装改訂版のあとがき  418