「源氏物語」と戦争  戦時下の教育と古典文学

有働裕

2,000円 +税

ISBN: 978-4-7554-0127-5        2002年12月発行

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道徳の書か?淫靡の書か?一五年戦争下の国定教科書に掲載された「源氏物語」――異色の小学校教材とその波紋。

序 章 「古典」を「教える」ということ  5
特攻隊機の「七生報国」/教育と古典の「精神」/古典文学への「愛着」/新しい古
典文学教育のために

第一章 教材「源氏物語」の登場  16
「サクラ読本」の登場/文学趣味と国家主義/教材「源氏物語」の本文/「源氏物語
」と時局/「抵抗」説への疑問/教材「源氏物語」の果たした役割

第二章 国民文化教材「源氏物語」  31
『編纂趣意書』に記された意図/『小学国語読本綜合研究』に記された意図/宣長読
本としての「サクラ読本」/《若紫》の教育的配慮の実態/消された光源氏/《末摘
花》での配慮/「源氏物語」の少女像

第三章 教材「源氏物語」の背景  50
なぜ『源氏物語』なのか/井上赳と『源氏物語』/文学史研究の中の『源氏物語』/
「源氏物語」劇の上演禁止/藤村作の古典教育論/国語教育学会の設立/『むらさき
』と『解釈と鑑賞』/島津久基の『源氏物語』教材論/『源氏物語』による道徳教育
/「源氏物語」の背景にあるもの

第四章 教材「源氏物語」の反響  75
教材「源氏物語」の登場と国語教育界/「飛躍日本」の「源氏物語」/画期的な古典
重視読本/黙認される矛盾/増幅される教材の意義/新読本は「安易な妥協」/「源
氏物語」への疑問/教育ジャーナリズムの迎合/「内容のともなはぬ文章」

第五章 橘純一による批判  100
削除要求の開始/橘純一と雑誌『国語解釈』/教育現場とのかかわり/「源氏物語」
削除要求の拡大/「区々たる俗論」│無視される橘純一/「源氏物語」批判は「一知
半解の考」/橘の主張は「危険思想」/修正された「源氏物語」/橘にとっての「源
氏物語」批判

第六章 教室の「源氏物語」  132
芦田恵之助の「源氏物語」礼讚/芦田の教材分析と疑問/友納友次郎と「源氏物語」
/友納の「源氏物語」の脚本化/教師用指導書の「源氏物語」/「優秀国民」として
の態度を養う/「源氏物語」に対する児童の反応(一)/「源氏物語」に対する児童
の反応(二)/教室の「源氏物語」

終 章 「源氏物語」の行方  160
戦後教育政策の始動/「古典」からの解放/「国文学の新方向」の模索/「源氏物語
」の行方/新しい古典研究を求めて

あとがき  177